虫歯予防・小児歯科にチカラを入れている、高知県高知市愛宕町の松木歯科医院
日本の子供のむし歯ランキングをみると、悲しいことに世界の先進国の中でワースト1です。
しかし、お砂糖をたくさん食べているかというとそんなことはありません。むしろ、他の国の1/2〜1/3ぐらいしか食べていません。
歯みがきはどうかというと、「うちの子は歯をよく磨かないから・・・」という声をよく聞きますが、よその国の子供はもっと磨いていません。
日本の子供はとても真面目で、世界で一番歯みがきをしています。
日本の子供たちは、こんなに頑張っているのになぜ他の国の子供たちの方がむし歯の数が少ないのでしょうか?
その答えとして日本は先進国の中で最もフッ素の利用が遅れているからと考えられています。
ワシントン大学のPage RCは「フッ素の効果が証明されるまで、世界中にむし歯の予防法は存在しなかったのである」とまで述べています。
1985年に国際歯科連盟(FDI)と世界保健機構(WHO)の共同作業班の報告書のなかで日本の歯科保険の世界での地位を以下のように報告しています。
「日本の砂糖消費量は先進国の中では最も少ない。歯科医師は人口2000人に対して歯科医師一人と充足した状態であり、優れた歯科医師サービスが提供されている。
さらに、保健所では妊婦、母子、幼児を対象とした歯科保険指導やむし歯予防サービスが行われている。
しかし、他の先進諸国と比較したとき、日本の歯科医療にはもっとも重要なものが欠けている。
それはフッ素(フッ化物)の利用である」
この報告書から20年経過した現在、フッ化物の利用がみなさんの十分な理解のもと、普及していると言えるでしょうか。ほとんどかわっていないように思えます。
一方、アメリカでは学童期から歯科保健教育学が組み込まれています。テキサス州の保健省が作成した小学生対象の「むし歯予防のための健康教育教材」には、小学4年生にフッ化物のむし歯予防効果を説明するイラストが載せられているのです。
ここではアメフトのヘルメットをかぶったイラストを使用して、局所応用ではフッ化物が外側から作用して硬くなることを示し、また、歯が重量挙げをしているイラストでは全身応用によってフッ化物が血中に入り歯が内部から強く丈夫になることを分かりやすく説明しています。
また、小学5年生の教材には、児童自身に歯科診療費を計算させる課題も載せられています。詰めもの1カ所:35ドル、詰めもの2カ所:50ドル、かぶせ物:350ドル、抜歯30ドル、入れ歯2000ドル、フッ化物塗布12.5ドル、レントゲン45ドルと歯科医院での診療費が具体的に書かれ、各ケースによる診療費を計算し、子供に比較をさせています。この教材を使うことにより、子供のために先行投資をするのと、歯を悪くした後で高い治療費を払うのとどちらが得かを子供自身に計算させ、経済的な観点から歯科予防を学習するシステムとなっています。これらの教育を受けた子供たちは、やがて大人になると定期的に歯科医院を受診し、積極的に予防や健診を受けるようになり、理想的な歯科予防医療の構造が自然と生まれるようになっています。これら歯科保健教育の日米格差が、定期健診の受診率や80歳での残存歯の数の違いとなって表れているのです(資料)。
ちなみに私が、フッ化物の作用や効果について学んだのは、大学の歯学部に入ってからです。何という違いでしょう!
日本ではもっともむし歯予防効果のある水道水フッ化物濃度の適正化(フロリデーション)をはじめ、ベスト3を行うことができません。そこで、我が国ですることのできるむし歯予防法をあらためて、ランキング化すると次のようになります。
日本でできるむし歯予防ランキング | むし歯予防効果 |
1位 フッ化物洗口(フッ素のうがい)(家庭でできる) | 50〜60% |
2位 フッ化物配合歯磨剤(家庭でできる) | 20〜30% |
3位 フッ化物配合シーラント(歯科医院でできる) | 20〜30% |
4位 フッ素塗布(歯科医院でできる) | 20〜30% |
5位 甘味制限 | データ無し |
6位 キシリトールなどの代替糖の利用 | データ無し |
1位〜4位を組み合わせて、続けることで最大のむし歯予防効果をあげることができます。この中でやはりもっともむし歯予防効果が高い1位のフッ化物洗口が一番のお勧めです。これがむし歯予防の基本です。
さらに、効果を高めたい人は2〜4位のメニューを付け足して自分の歯の健康維持に役立てて下さい。必ず、効果が出ます。コツは早くはじめて続けることです。実行しやすいのは2位のフッ化物配合歯磨剤を使用することでしょう。スーパーやドラッグストアーで裏の成分表を見て、フッ化物が配合されているかどうかをチェックして購入して下さい。
(more賢い歯磨き粉の見分け方)
フッ化物配合歯磨剤の使い方にもコツがあります。フッ素の量が少なかったり、うがいして洗い流してしまったりしてはその効果は期待できません。
歯ブラシの半分ほどの量を使用します。
子供の場合
大人の場合
良く歯磨きをした後、10cc程度の少量の水で2回までうがいをします。その後30分は飲食をしないようにするのが使用法のコツです。